ミラノ五輪×ファッションウィークがもたらす「究極の2週間」
2026年2月。この冬、北イタリアは世界で最も「濃密な」場所になります。
2月6日から22日まで開催される「ミラノ・コルティーナ冬季五輪」。その興奮が冷めやらぬわずか2日後の24日からは、世界四大コレクションの一つ「ミラノ・ファッションウィーク(MFW)」が開幕します。
スポーツの熱狂とモードの洗練が、これほど完璧なタイミングで交差する瞬間は、歴史上でも稀有な出来事です。ここで立ち現れるのは、現代ファッションの最重要トレンドである「アスラグジュアリー(アスレチック×ラグジュアリー)」の完成形。それは単なる流行ではなく、現代のビジネスパーソンが身にまとうべき「都市の教養」そのものです。
この「奇跡的な2週間」をどう読み解き、自身のキャリアとライフスタイルの糧にするか。本稿では、ミラノとコルティーナ、そして観戦の裏側に隠された戦略的な楽しみ方を詳しくガイドします。
仕事も日常も加速させる「スマートな戦闘服」
ミラノの街を歩けば、そこには単なるスポーツウェアの域を超えた「アーバン・テック」の進化が溢れています。大都市ミラノにおけるアスラグジュアリーは、常に機能的でありながら、同時に極めてエッジの効いた「都市の戦闘服」としての側面を持っています。
ただ着るのではない、文脈をまとう。
まず足を運ぶべきは、イタリア代表チームの公式アウトフィッターを務める「EA7 Emporio Armani」が仕掛ける拠点です。サン・バビラ周辺の公式ストアや期間限定の没入型施設では、単に製品を並べるだけでなく、最新のテキスタイル技術とアルマーニらしいエレガンスがどう融合しているかを体感できます。
ここでは、撥水性、透湿性といった高機能スペックを、いかにしてモードなシルエットに落とし込んでいるかを観察してください。特に、都会のコンクリートに映えるモノトーンやメタリックな質感をベースとした「カプセルコレクション」は、現代のビジネスパーソンが日常に取り入れやすいスタイルの宝庫です。
「なぜこのカッティングなのか」「この素材がなぜ選ばれたのか」という問いを立てながらプロダクトを見ることで、私たちが日常的に着る服に対する解像度が飛躍的に高まります。
表面的な流行を超えて
さらに、デザインの聖地である「トリエンナーレ・ミラノ」で開催される文化関連の展示は必見です。ここでは、スポーツの道具がいかにして「美」を獲得してきたか、その歴史と未来が提示されています。
表面的なデザインだけでなく、素材開発や人間工学といった「思想」のレベルでスポーツとデザインがどう交差しているかを理解することで、街を行き交う人々の装いの裏側にある文脈を読み解く力が養われます。ミラノで吸収すべきは、こうした「高度なテクノロジーを、いかにして洗練された都市生活の一部として調和させるか」という、スマートなストリートトレンドの真髄なのです。
銀世界の社交場が磨き上げた「静かなる品格」
一方、「ドロミテの真珠」と称されるコルティーナ・ダンペッツォで展開されているのは、ミラノのテック感とは対極にある、歴史と伝統に裏打ちされた「アルパイン・ラグジュアリー」の世界です。
Corso Italia:雪上のランウェイ
メインストリートである「Corso Italia(コルソ・イタリア)」は、まさに雪上のランウェイとなります。ここで注目すべきは、Prada、Loro Piana、Dior、Louis Vuittonといったラグジュアリーブランドが再定義する、現代的なマウンテンスタイルです。
例えば、Loro Pianaが提案する最高級のカシミヤやビキューナを用いたスポーツウェアは、機能性を追求しながらも、触れた瞬間に分かる圧倒的な上質さを放っています。これこそが、富裕層が支持する「クワイエット・ラグジュアリー」のウィンターバージョンです。派手なロゴではなく、素材の光沢や肌触りでその価値を語る。この姿勢は、30代からのビジネススタイルにおける「引き算の美学」を教えてくれます。
氷点下のドレスコード
コルティーナでの視察ポイントは、いかにして「過酷な自然環境への対応」と「社交場としてのエレガンス」を共存させているか、という点にあります。
重厚なシアリングコートの下に最新のテック素材のインナーを忍ばせる、あるいはヴィンテージライクなノルディック柄セーターを現代的なカッティングのパンツと合わせる。こうした、伝統的な「アルプス・スタイル」と現代の「ラグジュアリー」の融合は、私たちの日常においても「品格を保ちながらアクティブに動く」ための大きなヒントを与えてくれます。
「観客」で終わるか「分析者」になるか
オリンピックという舞台を、単に競技を楽しむだけでなく、そこに集まる「人」と「トレンド」を読み解く戦略的なプランに変えていきましょう。
ロゴを追うな、質感を追え
冬季五輪において、フィギュアスケートの会場である「メディオラヌム・フォーラム」は、世界で最も洗練された「冬の装い」が集結する巨大なランウェイへと変貌します。
ここで実践すべきは、観客の装いを分析する「定点観測」です。イタリアの富裕層や世界中のファッショニスタたちが、「スポーツ観戦」というカジュアルな場に、いかにして「品格」を共存させているかを観察してください。
観察のポイントは、ブランドのロゴを追いかけることではなく、「素材の組み合わせ」と「シルエットのバランス」にあります。高機能アウターに上質なカシミヤスカーフを巻く、あるいはスポーティーなダウンをフォーマルな街着のように着こなす。これらは、広告写真ではない、リアルな現場でしか得られない「生きたデータ」です。
昼はショールーム、夜はリンクへ
多忙なビジネスパーソンにとって、時間は最も貴重な資源です。インプットを最大化するために、試合が夜に多いフィギュアスケートやアイスホッケーを軸にスケジュールを組みましょう。
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日中の活用: 「トリエンナーレ・ミラノ」やブランドのショールームを巡り、最新のデザインと思想を深掘りします。
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夜の集中: 日中のリサーチで得た仮説を携えて会場へ向かい、実際の観客や会場の熱気の中にその「答え」を探します。
この「思考と体感のサイクル」は、ビジネスにおける仮説検証そのものです。熱狂の中で競技を楽しみながらも、冷静な視点でトレンドを分析する――この二面性こそが、大人のオリンピック観戦の醍醐味です。
【社交】Casa Italia:世界とつながるための最強の投資
オリンピックを「消費」で終わらせず「投資」に変えるための鍵、それが「Casa Italia(カーザ・イタリア)」です。
世界最高峰の社交ハブ
ここは単なるイタリア代表チームの拠点ではなく、アート、デザイン、食、そしてビジネスの粋を集めた最高峰の社交場です。ミラノ、リヴィニョ、コルティーナの3箇所に設置されるこのパビリオンには、イタリア国内の要人、大会スポンサー企業の重役、世界中のクリエイターが集います。
プロフェッショナルな振る舞いの極意
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「教養」を共通言語にする:
エグゼクティブにとって、ビジネスの話の前に「文化的なリテラシー」を共有することは、相手を信頼するか判断する重要な指標です。事前に視察した「トリエンナーレ」の感想や、コルティーナの「アルパンスタイル」への洞察をトピックにしましょう。
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スマートなデジタル・ネットワーキング:
夕刻のアペリティーボ(食前酒)の時間、会話が弾んだらLinkedInのQRコードを提示。これがグローバル・スタンダードな振る舞いです。
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「アスラグジュアリー」な装い:
フォーマルすぎるスーツよりも、ミラノの洗練とスポーツをミックスしたスタイルが好まれます。その場の文脈に馴染みつつ、個性を少しだけ主張する。その絶妙なバランスが信頼感を生みます。
【まとめ】2026年、新しいあなたに出会うために
この旅を終え、帰国の途につく頃、あなたの手元には3つの大きな財産が残っているはずです。
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研ぎ澄まされた感性: ただ流行っているものを追いかけるのではなく、「なぜこれが今、支持されているのか?」という背景や作り手のこだわりを読み解く力です。この視点を持つことで、情報の波に流されることなく、自分にとって本当に価値のあるものを選び抜く審美眼が身につきます。
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強固なグローバル・ネットワーク: 「Casa Italia」のような場所で交わされるのは、会社名や役職に頼らない、一人の人間としての対話です。共通の文化や美意識をきっかけに結ばれた絆は、単なるビジネス上の付き合いを超え、世界中のプロフェッショナルと対等に渡り合うための一生の財産になります。
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アップデートされた自己スタイル: 都会的なスピード感(機能性)と、リゾート地のような優雅さ(品格)。この相反する二つを自分の中でうまくミックスできたとき、それは揺るぎない「自信」として立ち現れます。どんな場所でも気負わず、自分らしく振る舞えるその佇まいこそが、周囲を惹きつける「大人の存在感」となるのです。
2026年、ミラノ・コルティーナの冷徹で清らかな空気は、あなたの感性を再起動(リセット)し、次なるステージへと押し上げる最高の舞台装置となります。トレンドに流されるのではなく、自らがトレンドの源泉を理解し、その価値を語れる存在へ。
今、その扉を開く準備は整いました。北イタリアの銀世界で、新しく生まれ変わったあなたに出会えることを楽しみにしています。

アンティークバイヤーのみさきです。好きな言葉は「百聞は一見に如かず」


