世界と日本のFX取引ランキング比較
2024年の世界のFX通貨ペア取引シェア・ランキングと、2024年12月の日本国内のFX通貨ペア取引シェア・ランキングを比較し、その傾向と考察をまとめてみました。
2024年の外国為替(FX)市場は、世界全体と日本国内とでは、取引される通貨ペアの人気に顕著な違いが見られました。データを比較すると、それぞれの市場の特性や参加者の関心の所在が浮かび上がってきます。
まず世界に目を向けると、2024年の取引シェア・ランキングでは、EUR/USD(ユーロ/米ドル)が27.95%と圧倒的な首位を占めています。
これは、世界経済において最も重要な二大経済圏である欧州と米国の通貨ペアで、貿易決済、投資、ヘッジなど、様々な実需に基づいた取引が膨大に行われていることを示しています。
順位 | 通貨ペア | 取引量シェア |
---|---|---|
1 | ユーロ/米ドル(EUR/USD) | 27.95% |
2 | 米ドル/円(USD/JPY) | 13.34% |
3 | 英ポンド/米ドル(GBP/USD) | 11.27% |
4 | 豪ドル/米ドル(AUD/USD) | 6.37% |
5 | 米ドル/カナダドル(USD/CAD) | 5.22% |
6 | 米ドル/スイスフラン(USD/CHF) | 4.63% |
7 | NZドル/米ドル(NZD/USD) | 4.08% |
8 | ユーロ/円(EUR/JPY) | 3.93% |
9 | 英ポンド/円(GBP/JPY) | 3.57% |
10 | ユーロ/英ポンド(EUR/GBP) | 2.78% |
次いでUSD/JPY(米ドル/円)が13.34%で2位、GBP/USD(英ポンド/米ドル)が11.27%で3位と続きます。以下、AUD/USD(豪ドル/米ドル)、USD/CAD(米ドル/カナダドル)、USD/CHF(米ドル/スイスフラン)、NZD/USD(NZドル/米ドル)と、トップ10のうち7つまでが米ドルを含む「ドルストレート」の通貨ペアで占められており、依然として米ドルが世界の基軸通貨として中心的な役割を担っていることが明確に見て取れます。
クロス円(円と米ドル以外の通貨ペア)ではEUR/JPY(8位)、GBP/JPY(9位)がランクインしていますが、そのシェアはドルストレートと比較すると限定的です。

なぜ日本ではドル円が強いのか?
一方、2024年12月の日本国内のFX取引シェアランキングを見ると、様相は一変します。USD/JPY(米ドル/円)が88.26%という驚異的なシェアを占め、文字通り市場を独占しています。
世界ランキングでも2位と高い位置にいますが、日本国内での人気は突出しており、日本の投資家にとって米ドルと円の関係がいかに重要視されているかが分かります。
これは、日本人にとって最も身近な外貨で、経済ニュースなどでの情報量も豊富なこと、そして2024年を通じて続いた円安傾向や日米金利差への強い関心が背景にあると考えられます。
順位 | 通貨ペア | 取引量シェア |
---|---|---|
1 | 米ドル/円(USD/JPY) | 88.26% |
2 | ユーロ/円(EUR/JPY) | 3.08% |
3 | 豪ドル/円(AUD/JPY) | 2.89% |
4 | 英ポンド/円(GBP/JPY) | 2.85% |
5 | ユーロ/米ドル(EUR/USD) | 1.56% |
6 | メキシコペソ/円(MXN/JPY) | 0.38% |
7 | 豪ドル/米ドル(AUD/USD) | 0.33% |
8 | NZドル/円(NZD/JPY) | 0.28% |
9 | 英ポンド/米ドル(GBP/USD) | 0.24% |
10 | スイスフラン/円(CHF/JPY) | 0.12% |
日本国内ランキングの2位以下は、クロス円が上位を独占している点が最大の特徴です。2位のEUR/JPY(3.08%)、3位のAUD/JPY(2.89%)、4位のGBP/JPY(2.85%)と続き、8位のNZD/JPY(0.28%)、10位のCHF/JPY(0.12%)まで、トップ10のうちUSD/JPYを除く6つがクロス円となっています。
世界ランキングでは8位、9位にようやく顔を出すEUR/JPYやGBP/JPYが、日本では2位、4位と上位につけていることからも、日本の投資家が米ドルだけでなく、様々な通貨と「円」との組み合わせに強い関心を持っていることがうかがえます。
さらに注目すべきは、世界ランキングでは圏外のMXN/JPY(メキシコペソ/円)が、日本では6位(0.38%)にランクインしている点です。
これは、メキシコペソのような比較的高金利とされる通貨と、低金利の円との組み合わせによって得られるスワップポイント(金利差調整分)を目的とした取引が、日本の個人投資家の間で根強い人気を持っていることを示唆しています。(ただし、この日本国内データは12月単月のものであり、年間を通じたランキングとは異なる可能性や、他の高金利通貨ペアの人気変動も考慮する必要はあります。)
世界ランキングで圧倒的1位のEUR/USDは、日本では5位(1.56%)にとどまり、7位のAUD/USD(0.33%)、9位のGBP/USD(0.24%)といった他のドルストレートペアも、ごくわずかなシェアしかありません。
これは、世界市場が米ドルを中心に動いているのに対し、日本の(特に個人投資家中心の)市場では、取引の軸足が圧倒的に「円」に置かれていることを明確に示しています。

あなたの取引は世界基準?それとも日本型?
これらの比較から、以下の傾向と考察が導き出されます。
- 市場参加者の違い: 世界市場は機関投資家や実需筋の取引が中心で、経済規模や流動性の高い主要通貨(特に米ドルとユーロ)の取引が主流です。一方、日本国内市場(特にデータが反映しやすい個人投資家市場)では、個人投資家の取引スタイルや関心がランキングに色濃く反映されています。
- 円中心の日本市場: 日本の投資家は、自国通貨である「円」が絡む通貨ペア(USD/JPYおよびクロス円)に取引が極端に集中しています。これは情報へのアクセスしやすさや、為替変動リスクを円ベースで捉えやすいことなどが理由と考えられます。
- 日本の個人投資家の特性: スワップポイント狙いの取引や、比較的ボラティリティの高い通貨ペアでの短期売買への関心が依然として高く、それがMXN/JPYのような通貨ペアの人気に繋がっている可能性があります。
2024年のFX市場は、グローバルに見れば依然として米ドルが中心ですが、日本国内に目を向けると、米ドル/円への集中の度合いが極めて高く、さらにクロス円、特に特定の高金利通貨ペアへの関心が高いという、世界市場とは異なるユニークな特徴を持っていることがわかりました。
主要な通貨ペアの取引動向
これらの通貨ペアは、世界の経済状況、金利差、政治的要因などにより変動します。取引を行う際は、各通貨ペアの特徴や市場の動向を十分に理解することが重要です。
通貨ペア | 分類 | 特徴・背景 |
---|---|---|
EUR/USD | 主要通貨ペア | 世界最大の取引量を誇るペアで、米ドルとユーロという二大経済圏の通貨間取引。 |
USD/JPY | 主要通貨ペア | 米ドルと日本円のペアで、アジア市場での取引が活発。 |
GBP/USD | 主要通貨ペア | 英ポンドと米ドルのペアで、ロンドンとニューヨーク市場の影響を受けやすい。 |
AUD/USD | 主要通貨ペア | 豪ドルと米ドルのペアで、コモディティ価格の影響を受ける。 |
USD/CAD | 主要通貨ペア | 米ドルとカナダドルのペアで、エネルギー市場との関連が深い。 |
USD/CHF | 主要通貨ペア | 米ドルとスイスフランのペアで、安全資産としての取引が多い。 |
NZD/USD | 主要通貨ペア | ニュージーランドドルと米ドルのペアで、農産物価格の影響を受ける。 |
EUR/JPY | マイナー通貨ペア | ユーロと日本円のペアで、欧州とアジアの経済動向に敏感。 |
GBP/JPY | マイナー通貨ペア | 英ポンドと日本円のペアで、ボラティリティが高い。 |
EUR/GBP | マイナー通貨ペア | ユーロと英ポンドのペアで、EUと英国の経済関係を反映。 |
AUD/JPY | マイナー通貨ペア | 豪ドルと日本円のペアで、アジア太平洋地域の経済動向に影響される。 |
EUR/AUD | マイナー通貨ペア | ユーロと豪ドルのペアで、欧州とオセアニアの経済関係を反映。 |
EUR/CHF | マイナー通貨ペア | ユーロとスイスフランのペアで、安全資産としての取引が多い。 |
AUD/NZD | マイナー通貨ペア | 豪ドルとニュージーランドドルのペアで、オセアニア地域の経済動向に敏感。 |
NZD/JPY | マイナー通貨ペア | ニュージーランドドルと日本円のペアで、農産物価格とアジア市場の影響を受ける。 |
GBP/AUD | マイナー通貨ペア | 英ポンドと豪ドルのペアで、英国とオーストラリアの経済関係を反映。 |
GBP/CAD | マイナー通貨ペア | 英ポンドとカナダドルのペアで、エネルギー市場の影響を受ける。 |
EUR/NZD | マイナー通貨ペア | ユーロとニュージーランドドルのペアで、欧州とオセアニアの経済動向に敏感。 |
AUD/CAD | マイナー通貨ペア | 豪ドルとカナダドルのペアで、コモディティ価格の影響を受ける。 |
GBP/CHF | マイナー通貨ペア | 英ポンドとスイスフランのペアで、安全資産としての取引が多い。 |
補足情報
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主要通貨ペア(Major Pairs): 米ドル(USD)と他の主要通貨(ユーロ、円、ポンドなど)との組み合わせで、取引量が最も多く、流動性が高い。
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マイナー通貨ペア(Minor Pairs): 米ドルを含まない主要通貨同士の組み合わせで、取引量は主要通貨ペアより少ないが、依然として活発に取引されている。
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エキゾチック通貨ペア(Exotic Pairs): 主要通貨と新興国通貨の組み合わせで、取引量は少ないが、高いボラティリティを持つ。

アンティークバイヤーのノリです。好きな言葉は「人はパンのみにて生くるものにあらず」。物質的な豊かさだけではなく、精神的な充足感も大切にしています。